トピックアウトライン

  • シニアのICT活用と社会活動を支援

    【若者とシニアが学び合うまちづくり】

     2019年5月、富山県射水市で若者とシニアがともに学ぶ新たな活動が始まりました。

     この地域には、認知症予防やICTを学ぶ短期大学・専門学校があり、多くの学生が集まっています。

     一方、まちづくりを考える地域振興会では、ICTの活用や若者の考えを取り入れたまちづくりを模索していました。

     そこで、若者とシニアが定期的に集い、お互いに学び合うコミュニティ「ポケットサロン小杉」(略称:ポケサロ小杉)を発足させました。地域振興会と短期大学・専門学校が共同で開催、企画・運営支援を私たちの研究会が担っています。

     サロンでは、地域のシニアから近況とその中で考えている課題を持ち寄り、学生は地域の協力を得て健康意識のアンケート調査を実施するなど、お互いに学び合う関係づくりを大事にしています。

     継続的な学び合い・話し合いを促進する手立てとして、スマートウォッチを活用したシニアの健康管理を取り入れています。常時身に付けるスマートウォッチ から心拍数や睡眠記録などがスマートフォンに記録され、そのデータをもとに健康アドバイスを受けるものです。シニアが自らの健康意識を高めるとともに、学生と関心ごとを共有する好機会になり、学生も教科で学んでいることを実践的に深める機会となるものです。合わせて、スマートフォンの継続的な活用によって、シニアの情報バリアフリーにつながることが期待できます。

     このように、若者とシニアが継続的に学び合い、心も体も街も若々しい地域づくりを、地・学一体となって取り組むことにこのサロンが役割を果たすと期待されています。

    【シルバー情報サポータ活動】

     65歳以上の高齢者の割合が7%から14%と2倍に増えるのに、フランスでは126年間かかっているのに比べ、日本は24年間で達しています。さらに短い13年間でその率が21%に達している日本は、世界の高齢先進国です。

     また、ICTの目覚ましい進歩は、このような高齢者にとって、利用する者とそうでないものの格差をますます拡大させようとしています。結果として情報のつながり、人のつながりが希薄な、孤立する高齢者の増加が懸念され、医療・介護などさまざまな社会的課題解決の視点として、考えていく時にあります。

     シルバー情報サポータ活動は、ICTを活用したQOL(Quality of Life=社会的に見た生活の質)の向上を支援する活動です。平成21年度に「富山市シルバー情報サポータ活動」として研究開発と試行運用を行ってきました。高齢になっても情報のつながり、人とのつながりを保ち、社会との多様な接点を通じて出番や生きがいをもった生活を送ることができるよう、さまざまな工夫を行っています。ICTが高齢者の格差を拡げるだけでなく、むしろ、人との情報交流や社会参加に積極的になることに役立つことも示しています。

  • これまでの取り組み

     当研究会では、平成22年に総務省「ICTふるさと元気事業」の採択を受け、富山市、富山大学、富山インターネット市民塾と連携し、「富山市シルバー情報サポータ活動」(事業名称:情報バリアフリーで高齢者を元気にする富山シルバー情報サポータ活動事業」を開始しました。

     事業は、(1)高齢者がICT機器の便利さへの関心を持ち、(2)その中で得られる情報活用への関心を高め、(3)情報を生かした街なかへの外出と地域社会との関わりを促し、(4)高齢者が持つ豊かな経験・知識を地域社会に役立てる社会参加を促すことをねらいとしたものです。

     急速に普及してきたスマートフォン等のICT機器が、高齢者にとって逆に活用を敬遠する障壁(バリア)となることも懸念される中、ユニバーサルデザインを取り入れたアプリの開発や、積極的な活用を促す支援プログラムの開発、自律的な運営の仕組みづくりなどに取り組みました。

     事業は3段階にわたって開発・評価を行い、支援プログラム等の効果と今後に向けた課題を整理した上で、平成28年に地域団体に運営を引継ぎました。(現在も継続中)

     この間のさまざまな開発と試行・評価の実践は、その後に同様の活動を目指す各地の取り組みを支援する当研究会の活動に役立てています。